【結城萌子】古き良き声優に憧れる、芯の強さを感じる新人声優

現在声優として活躍している人の中には、元子役や元アイドル、元歌手など様々な芸能活動をかつてやっていて、新たな活動として声優を始めた人も多い。2021年の冬アニメ『IDOLY PRIDE(アイドリープライド)』にアニメ初出演となった結城萌子もその中のひとりであるが、彼女の経歴はそんな声優の中でもかなり特殊だ。彼女に関して調べていると、たくさんのインタビュー記事が残されていることを知った。そのインタビューがなかなか興味深いものだったので、ここでまとめて紹介する。それらを引用しながら「結城萌子」という声優に迫っていきたい。

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結城萌子のプロフィール

生年月日は3月31日。年齢は非公表。香港生まれ、インターネット育ち。これは彼女がかつて別名義で音楽活動をしていたときのキャッチコピーである。香港生まれというのは事実だが、インターネット育ちというのはデジタルネイティブ世代のオタク趣味を持ったアーティストということで名付けられたのだろう。学生のころは1人でいることが多く、ネットの友達が唯一の友達だったとも語っている。

結城萌子は2014年から綿めぐみという別名義で歌手活動をしていた。当時の楽曲は今でもYouTubeで聴くことができる。曲の雰囲気やキャッチコピーからもわかるように、当時(の結城萌子は私は知らないが)はミステリアスガールというキャラ付けで売り出そうと思っていたのだろう。不思議ちゃんっぽいキャラクターの受け答えも散見されるが、これは「綿めぐみ」という人物を演じていたともインタビューでは語っている。

その後、2018年には結城萌子に改名し、声優活動を開始する。A&Gで彼女初の冠ラジオ番組『結城萌子のいま、おきました。』がスタートする。しかし、このラジオ番組がスタートした時点ではまだ声優デビューしておらず、デビューになったのは2019年の映画『あした世界が終わるとしても』のモブ役だった。

2019年8月には、ベッキーとの不倫で話題になった「ゲスの極み乙女」の川谷絵音が作曲、編曲には菅野よう子Tom-H@ckなど、アニソン業界とも馴染みの深い、超のつくほどの著名な音楽家を起用したシングル『innocent moon』をリリースする。過去の音楽活動が川谷絵音の目に止まったらしい。このときのことを前述のラジオ番組では「来世の分まで徳を使ってしまった」という独特な表現で嬉しさを表現している。

そして、2020年1月からはアニメ初レギュラーとなる『IDOLY PRIDE』の一ノ瀬怜役を演じている。こういう書き方をすると、歌手活動で挫折したからしょうがなく声優になったんでしょと思われるかもしれない。確かに声優の中には、歌手としては売れなかったので、声優という肩書で歌手活動をやっている人もいるのは事実だと思うが、彼女は最初の歌手デビューの時点から、声優が本当の夢であることを語っている。

アニメが好きで、声優になりたいんです。(中略)前例がないんで、私も、大丈夫なのかな?とか思いながら活動してるんですけど。(中略)声優になるのが最終目標で、この活動もそこに到達するための通路なので。
2016年9月23日(ミーティア)

つまり、結城萌子にとって、綿めぐみは声優になるための演技を勉強する一環のようなものだったとも言える。また、声優デビューの前には声優養成所にも通っていたらしく、声優業に対する本気度が伺える。少なくとも、アイドルや役者で売れなかったけど声優なら大丈夫やろうと思って、声優活動を始めるような軽薄な人物ではないことは知ってもらいたい。

そのときは(声優の)養成所に通っていたので、まだ勉強している身で、右も左もわからなかったんです。(中略)現場で得ることが多すぎるので、たくさん勉強していかないと声優として通用しないなと感じましたね。作品に出演できてうれしいという気持ちはもちろんありましたけど、自分の無力さを痛感したことのほうが大きかったです。
2019年9月4日(ananWeb)

結城萌子の芯の強さ

動画や番組などで彼女をみると華奢な体型もあって線が細い感じを受けるが、インタビューではデビュー当時から、かなりのビックマウスというか、芯の強さを見せている。正直言えば、そのインタビューが面白かったのでこの記事を書こうと思った。初期の頃の発言は、部分的には綿めぐみというキャラクターを演じたものではあったのだろうが、彼女自身の考えと大きく異なるものでもないと思う。

クラスメイトたちから「変な子」みたいな感じで見られてたのがすごい悔しかったです。私が変なんじゃなくて君たちが変なんだよ、と思ってました。いわゆるお嬢様学校で、みんな学校にずっと守られながら生きてきた子たちなんで、君たち社会に出たらそんな甘えは通用しないぞ、と。
2016年9月23日(ミーティア)

なによりも興味深いのは声優に対する考え方で、結城萌子は昨今の声優のアイドル化に対して否定的な考えを持っている。それは歌手デビュー当時に声優業界というものをよく知らなかったから、というわけではなく、最近でも同じような考えを持っているようだ。声優を「声でというよりも顔で覚えている」というのは痛烈だ。

わたしは、声優がアイドルのように露出して活動をする今の風潮が、あまり好きではなくて。昔だったら、メディアに露出することもそんなに多くなかったですし、今でも顔出しNGの大御所声優さんがいらっしゃいますよね。だから、最近の声優さんよりも、昔からいる大御所の声優さんのほうが、やっぱり好きなんです。新人の声優さんも、知ってはいるんですけど、声でというよりも、顔で覚えちゃってる感じですよね

今のアイドルさんは昔と違って、簡単に会いに行けるのはもちろんですが、一緒に写真を撮ったり、握手したりするのが大変そうじゃないですか。この活動でも、前に一回、「チェキ会はどうですか?」というお話をいただいたんですけど、それをやっちゃうと、わたしがアイドルじゃない意味がなくなってしまうので、その話はお断りしたんです。(中略)やっぱり、わたしはビジュアルからじゃなくて、歌から入ってきてほしいんです。今でも見た目じゃなくて、歌を評価してほしいっていう思いが一番にありますね。
2016年3月31日(日刊SPA!)

(CD)ジャケットをどうするっていう話になったときに、今の声優さんがどういうジャケット写真なんだろうっていうのをスクリーンに映したんですけど、全面的に顔面が出ている感じでキラキラしている感じで「これは私できないかも…」という感じだったんですけど。
2019年8月29日(SPICE)

彼女の憧れの声優は林原めぐみや高山みなみ、皆口裕子らしい。しかし、これらの考え方は『アイドリープライド』という顔出しアイドルコンテンツに出演している現状と矛盾しているように思える。とはいえ、彼女のかねてからの目標は「アニメなどの作品の曲をキャラクターとして歌いたい」ということだから、それとは合致しているように思う。現在の声優が歌ったり踊ったりするコンテンツは、声優の顔を出さないというのは事実上不可能だから致し方ないのかもしれない。

小さい頃からアニメやゲームが好きだから、そういう作品に自分が出て、その作品の曲を自分でキャラ上だったり主題歌だったり、どんなかたちでもいいんですけど、「結城萌子」として作品に出られたらというのが一番の目標ですね。
2019年9月4日(ananWeb)

確かに、彼女はTwitterなどのSNSをやっているが、自撮りなどの写真をアップすることは極端に少ない。最初の歌手デビュー時は「綿めぐみ」というキャラクターを壊さないために、自撮りをアップしないと発言していたが、元々「結城萌子」としてもそういう行為は好きではないのが本音なのだろう。

〈綿めぐみ〉は……ミステリアスな感じ。彼女はプライヴェートを公に出さない。間違っても自撮りをSNSにたくさんあげたりはしない。私は可愛いものがすごく好きなんですけど、〈綿めぐみ〉がピンクの洋服で可愛いものを身にまとってたりしたら変だと思うんです。だからそういうことはしない。
2016年2月2日(Mikiki)

またこれは驚きだったのだが、「異世界転生もの」は現実から逃避しているような感じがするとして批判している。声優を志している人物が、ここ数年アニメの主流になっている異世界転生を否定的に論じるというのはかなり勇気があると思う。仕事のために自分を曲げることはしないという強さを感じる。私も個人的に好きなタイプのアニメではないので親近感が湧いた。

自分にコンプレックスがあって、自分じゃない誰かになりたいと思って、声優を志した部分もあるんですけど、「キャラクター=自分」ではないので、「自分を生き続けなきゃいけない」というのは自覚しています。なので、「異世界転生もの」に自分を投影してる人に対しては、「なんで自分でやらないの?」って思っちゃうんですよね。
2019年8月15日(CINRANET)

変わらない芯の強さがある一方で、過去とは変わっていった部分もある。最初の頃はミステリアスな雰囲気で売り出していたが、2018年ごろからはその雰囲気を脱ぎ捨て、自分のことを知ってほしいと思うようになってきている。そこには、このまま歌手を続けていても夢である声優の仕事ができないのでは、という焦りや苦悩があったのかもしれない。

ミステリアス、よく分からない人みたいに思われているかもなんですけど、全然普通の人なので…。これから自分自身を伝える過程でガッカリされたり、幻滅されてしまうかもだけど…。ミステリアスと思われているなら、そのベールを一枚一枚はがしていきたいですね。なんというか、よく分からない人で終わりたくないな、と思っているので。自分のことを見せるのが、良いことか悪いことかは分からないんですけど、どう転ぶかはやってみないと分からないので。もっと知ってもらえる機会を作っていけたらいいなと思います。
2018年12月12日(THE FUTURE MAGAZINE)

まとめ

最近の声優には、なかなかお目にかかれないような魅力がある声優で、なんだか妙に惹かれてしまう。ビジュアルも悪くない、いやむしろ良いと思うけど、ビジュアルから入ってほしくないと言い切るのはクールだし、「声優」への憧れが本当に強いのだと思う。彼女が演じている『アイプラ』の一ノ瀬怜も芯の強いクールなキャラクターで、重なるところがある。

川谷絵音プロデュースで新曲を出したときに、私は音楽とずっと生きていかないといけないという運命だと語っていたが、最初のアニメがアイドルものだったのも、彼女の運命だったのかもしれない。シングルの名前は『innocent moon』だったが、『アイプラ』ではサニーピースというユニットを組んでいる。月と太陽というのも運命的な符号だ。

結城:びっくりしすぎてよくわからないのと、音楽はもともとやっていたので、やっぱり私は音楽とずっと生きていかないといけないんだなっていう風に思いました。一番は声優になるっていう夢があるけど、運命的なものは感じましたね。
2019年8月28日(RealSound)

『アイプラ』の最初のPVでは「最初からスポットライトを浴びる人なんていない」という台詞がある。結城萌子は最初からスポットライトが当たった人だったが、そのステージは彼女にとっては不本意なものだったかもしれない。声優という新たなステージで、さらに強い光を浴びられるように応援している。

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