芸能界では二世タレントというのが一大勢力となっている。親が有力な芸能人で、そのコネを利用して子供をテレビなどに出演させている。また、政治の世界では有力政治家というのはほとんどが二世、三世という世襲である。これは政治には資金が豊富に必要なこと、選挙で勝つための地盤が重要なこと(いわゆる地盤看板鞄の三バン)のためである。
二世というのは、ときに親の七光りだと嫌われることがある。声優業界は今まで二世声優というのは少なかったが、最近徐々にその数が増えてきている。ここでは、二世声優が最近になって増加している理由を考えるとともに、将来的な声優業界における二世声優の立ち位置を考えてみたい。
主な二世声優まとめ
まず、最も有名な二世声優のひとりは、大塚周夫と大塚明夫の親子であろう。大塚周夫は俳優でありながら声優・吹き替えにも多数の功績を残している。大塚明夫も多数の役・吹き替えを演じ、現在の声優界に欠かせない男性声優のひとりになっている。大塚明夫が最初に声優活動を始めたきっかけは父の紹介だったという。
また女性声優では、潘恵子と潘めぐみが有名だろうか。潘恵子はアニメでは『機動戦士ガンダム』のララァ役や『聖闘士星矢』アテナ役などが有名だ。潘めぐみも『HUNTER×HUNTER』ゴン役などが代表作にある人気声優になっている。面白いことに『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ではセイラ役を演じる。潘めぐみは母に憧れて声優を志したと語っている。
さらに、野島裕史、野島健児の兄弟の父親は声優の野島昭生である。こちらは野島健児が父に青二塾を勧められて、その後声優となって野島健児を見て兄の野島裕史が声優を志した。その他にも、かないみかと田上和枝など、枚挙に暇がない。
引用:井上ほの花Twitter
最近デビューした新人声優で言えば、井上ほの花が挙げられる。母親は井上喜久子。17歳に21歳の子供がいて時空がねじ曲がっているように思えるが、実の娘に間違いはない。井上ほの花は2019春アニメ『八月のシンデレラナイン』で河北智恵役を演じる。また、先日に、ある記事を見て知ったのだが、田中敦子の息子である田中光も声優デビューしている。そして公表はしていないので、実際親子かどうかわからないのだが、新人声優の山口竜之介と子安光樹は、それぞれ山口勝平、子安武人の息子ではないかと噂されている。父親が公表していた子供の名前と同じだし、写真でみると確かに似ているような気もする。
なぜ二世声優が増えているのか?
なぜ二世声優が増えているのだろうか。これは今まで二世声優が少なかった理由を考えれば想像がつく。今まで声優の職業は、俳優が時間の合間にやるようなものだったから声優の地位が低かった。つまりあえて声優になるよりも、俳優を目指す人が多かった。先の例で言えば、大塚明夫がそれによく当てはまっていて、俳優生活が苦しかったために声優の仕事を紹介されている。
しかし、最近は声優の地位は明らかに向上し、アニメだけでなくテレビなどにも出演し、舞台上では歌ったり踊ったりのパフォーマンスができる。給料も十分にもらっているだろう。言い方は悪いが、中途半端な俳優になるくらいなら、声優のほうがよっぽど売れるというところまで来ている。
子供どころか彼女すらいない私が言うのもなんだが、子供は親の背を見て育つというから、親の職業に憧れるというのは当然のことだ。それが華々しい声優という職業ならなおさらで、親の方にも特に反対する理由がない現状では、二世声優が増えていくのも必然と言えるかもしれない。
二世は声優業界の主流となるか?
声優人口は年々増加してきている。したがって二世声優もこれから増えていくだろう。また声優が役を手に入れるためにはコネクションが必要になる面もあるだろうから、二世声優は一般声優に対して有利な面があるのは間違いないと思う。しかしながら、タレントとは異なり、声優には、ある程度の技術が必要になる。
二世タレントは特になんの芸がなくても、親のバーターとしてテレビに出られることがあるかもしれないが、二世声優はそういうわけにはいかない。成功を収めている二世俳優が二世タレントに比べて数少ないのと同じ理由だ。したがって二世声優が主流になることはないと考えている。それでも最近は、少しずつ二世俳優も増えている。ただ活躍できる俳優は、やはり実力があるからでコネだけではないし、自ら二世だと喧伝しているわけでもない。もし仮に二世声優が増加したとしても、俳優と同じで実力のある声優だけが残るのだろう。