声優アワードは男女の区別をなくすべきなのか?

第16回の声優アワードの主演女優賞は緒方恵美が受賞した。その受賞スピーチで、声優アワードは男優賞、女優賞と別れているが、その男女の区別をなくすべきと発言して、いろんなネットニュースになっている。

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緒方恵美のスピーチ概要

女優賞で良いんですか?自分は、ずっと声優をやった年月、7割くらいを少年役の声優として過ごし、自分が女優と思ったことが、あまりない。(中略)これだけジェンダーフリーと言われる世の中で、声優界もカミングアウトしている人もいる。私もそうですが、普段の生活でも、ほとんど女性と思って生活していない人間もいる。

(営業上を含めて)同性愛者をアピールしている声優はたくさんいる。一方で、トランスジェンダーをカミングアウトしている声優を私はあまり知らないのだが、青木志貴が挙げられるだろうか。性自認が男であり、かつパンセクシュアルだと話したのが2020年に話題になった。仮に青木志貴が主演賞を取るとしたときに、男優賞なのか女優賞なのかは難しい問題である。

青木志貴さんが性自認は男でパンセクシャルだと告白
声優の青木志貴さんが、性自認が男であることを告白し、またパンセクシャル(全性愛者)だと発言したことが話題になっている。よく女の子が好きという女性声優がいるが、そういうただの営業ではなく、真剣に声優が自分の性自認や性的指向について発言...

男優とか女優とかじゃなく、顔出しの業界(俳優)の皆様よりも、ジェンダーフリーを発信できるのは、むしろ声優じゃないかと思う。次回からは、男とか女とか、どうでもいいので2人ずつとか、そんな感じになったなら、よりいろいろなことになるんじゃないか。

最も重要なのはここで、声優アワードの男優賞や女優賞という括りをなくすべきだと発言している。ジェンダー平等が叫ばれる世の中に合致した意見であり、確かに一理あるとは思う。

緒方恵美も述べているが、声優は俳優とは異なり、男性役を女性が演じたり、女性役を男性が演じたり、50歳近い熟年、壮齢の声優が高校生役を演じたり、10代の未成年が高齢者を演じたりすることが可能で、性別や年齢をも凌駕できる特殊な役者業である。

なので、ポリコレ的観点からではなく、合理的観点として、男優賞や女優賞という区別は本質的には不要である。余談になるが、一時期、『シンプソンズ』などの複数のアニメで、黒人のキャラクターを黒人以外が演じるのはダメという最高に頭の悪いポリコレが話題になったことがあった(HUFFPOST)。別の人種のキャラクターを演じることができることこそ、声優の素晴らしさである。逆に多様性を狭めるような行為をしてどこが正しいのだろうか。

※ 引用はすべて日刊スポーツから。

声優アワードに男女の区別をなくすことの問題点

ただ、声優アワードから完全に男女の括りを取っ払うことに全く問題がないわけではない。緒方恵美の主張では、「男とか女とかどうでもいいので2人ずつ」となっているが、仮に男性声優と女性声優を同じ評価基準で評価すると、どっちかの性別に偏ることが考えられる

多くのアニメは、基本的に男性が主演になっている(これ自体がジェンダー平等に反すると言われればその通りだが)。なので、主演賞を2人選ぶとすると女性声優が選ばれる可能性が低くなるかもしれない。

一方で、声優の数は女性声優の方が男性声優よりも圧倒的に多く、新しく出てくる女性声優も男性声優より多い。これは女性向けのアニメは増えているものの、やはり多くは男性向けだし、男性声優の方が声優として活躍できる期間が長い(世代交代が遅い)ことが理由として考えられる。

なので、新人賞はほとんどを女性声優が独占することになってもおかしくない。実際に昨年の声優アワードを見ると、男性声優で土屋神葉や伊藤昌弘の出演作品数を見ると、女性声優で落選した人よりも少ない。新人の男性声優が役を獲得することが難しいためだと思われる。主演賞はともかく、新人賞は新人声優を応援する場でもあると思うので、男女で受賞難易度に格差が生じるのは、好ましいとは言えない。

よって、仮に男女の区別を撤廃するとしても、結果的には毎年、男性3人女性5人という感じになってしまうと思う。男優賞女優賞という名前だけを取り去るのは「やってる感」でしかないような気もするが、ジェンダー平等のアピールにはなるし、トランスジェンダーの声優が受賞するときの問題が消え去る。声優アワードの注目度は、声優の社会的地位向上にともなって、年々上昇してきているので、新たな試みとしては、導入してもいいのではないだろうか。

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声優アワード緒方恵美
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